デジタルX線検査(DR)の概要
X線画像検査は爆発物検知や税関検査から配管検査まで非常に多くの用途に用いられてきました。長年、X線フィルムがほぼ唯一の画像表示手段でしたが、近年のデジタル技術により、FPD(フラットパネルディスプレイ)検出器を利用したデジタルX線検査(DR/Digital Radiography/デジタル・ラジオグラフィ)の利便性が大きく高まり、X線フィルムなどの既存の手法に対して置き換わっています。
フィルムやCRプレート(蛍光板。コンピューテッド・ラジオグラフィ[CR]で用いられる)と異なり、DRでは「高速」「高解像度」「低線量で安全」な画像検査が可能です。
DRとフィルムとの違い
カメラと同様に、既存のX線フィルムを用いたX線検査は時間が掛かり、環境や人体に対する悪影響が大きい傾向にあります。化学薬品による現像を必要とするだけでなく、画像の共有にも大きな手間が掛かります。
DRではフィルムではなく、画像認識素子を用います。そのため「大きなダイナミック・レンジ」「高解像度」「高速撮影」が可能になっています。撮影された画像は手元のタブレットに瞬時に表示され、処理・最適化・共有・保存・呼出を数秒で簡単に行うことができます。
- 高速撮影により低線量化を実現し、高い安全性を確保
- 再撮影が容易
- 撮影に必要な機材を1つの携行パッケージに収納し1人で運搬が可能
- 撮影したデジタルデータをワイヤレス/ハードコピーですぐに共有可能
- 高解像度・高品質画像撮影を実現
DRとコンピューテッド・ラジオグラフィ(CR)との違い
CRでは蛍光体結晶プレートをX線画像の記録に使用します。X線がプレートに吸収された後、露光したプレートがレーザでスキャンされます。その後、放出光がデジタル画像に変換され表示されます。
プレートに蓄積されたX線のエネルギーは急速に低下するため、画像の読み出しは非常に素早く行われる必要がありますが、同時に画像処理中の画質低下のリスクが常に存在します。
1枚の画像の読み出しには約1分という長時間が掛かり、更には専用の大きなスキャナが必要です。
それに対しDRは卓越したX線透過能力と高感度性によって「高速」「安全」「高品質」等の全性能を最大化しています。
- DRでは画像が瞬時に手元のタブレットに表示されるが、CRはスキャン工程が必要であるとともに画像のリアルタイムが不可能
- DRは単一工程で完結する(ロボット不要)が、CRでは最低2工程が必要であるとともに画像を見るにはスキャナの場所へ移動する必要がある
- DRは軽量で持ち運び可能であり、専用のバックパックに全てが収まるが、CRは特に機材、特にスキャナが重くほとんど持ち運び不可能
NOVO DR社製FPD(フラットパネルディスプレイ)検出器の特長
DRはX線検査に大きな違いをもたらしました。こんにちまでの研究開発と実際の現場において、フラットパネル検出器が最善のデジタル化手法であるとともに、既存のX線検査技術(フィルムやCR)と比較して大きく優れていることに対して疑いを挟む余地はありません。
その特長は端的に以下の項目にまとめられます:
- 短いセットアップ時間
- 短い撮影時間
- 高い画像品質
- 高い安全性
- 高い携行性
- 多岐にわたる画像処理手法